遺伝子の不思議「鎌状赤血球貧血」
こんにちは!
ごんです!!
僕たちセラピストは正常動作から逸脱した動作の改善を図ることがあります。
正常が分からなければ問題点に気付けない。
それはつまり動作の改善ができないことに繋がることになります。
そんなことを思いながら「正常」を突き詰めていた時期がありました。
発生学や発達学がその一つの答えになってきます。
そんな時に見つけた遺伝子の話。
劣性遺伝の方が優性遺伝より有利になるという話を見つけたのでご紹介します。
血液の顕微鏡所見
その遺伝性疾患の名前は「鎌状赤血球貧血」。
上の画像を見ると丸い紫と長細く鎌のような形のものがあるのが分かります。
前者が正常の赤血球。後者が鎌状赤血球になります。
赤血球
赤血球は血球の中で最も大きいものです。
この役割は、酸素を全身に運搬する機能を担っています。
赤血球の中にはヘモグロビンという蛋白質を有しています。
「ヘム」という鉄を含んだ色素と、「グロビン」というタンパク質からできいます。
ヘモグロビンは赤血球の重量の3分の1を占めています。
鉄は酸素と結合しやすい性質があり(酸化)、鉄分を含むヘモグロビンによって酸素が全身に運ばれているのです。
そして、酸化した鉄は赤色を示します。
血液の赤色は、ヘモグロビンに含まれる鉄が酸化した色なのです。
鎌状赤血球貧血
鎌状赤血球貧血は黒人に多い遺伝性疾患です。
赤血球の形が変化することにより血液が酸素を運びにくくなる、溶血性貧血です。
赤血球の寿命は通常4か月ほどです。
溶血性貧血では4か月よりも早いペースで赤血球が破壊されます。
赤血球の破壊スピードが速くなると、その減少を代償するためより多くの赤血球が骨髄でつくられるようになります。
しかしそれでも追いつかないほど破壊が進行すると、溶血性貧血に関連した症状が現れることになります。
軽症であれば日常生活は送れるが、重症の場合は成人前に多くが死亡するそうです。
黄疸、骨壊死、下腿潰瘍、細菌感染、脾臓の萎縮による激痛発作、微小血管の閉塞、脳卒中による神経系損傷が主な症状として言われています。
ここまで聞くと遺伝子の劣性遺伝により症状が出ることがいいように働くとは到底思えません。
しかし、この病気の原因遺伝子を持つ人は、原虫が赤血球に寄生して悪さをする「マラリア」にかかりにくいことが分かったのです。
マラリア
マラリア原虫をもった蚊(ハマダラカ属)に刺されることで感染する病気です。
世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行しており、2013年12月に公表された統計によると、1年間に約2億700万人が感染し、推計62万7,000人が死亡しています。日本でも100人近くが輸入感染で発症しています。
1週間から4週間ほどの潜伏期間をおいて、発熱、寒気、頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛などの症状が出ます。
マラリア原虫は、蚊の体内で生殖を行い、増殖したマラリア原虫は蚊の唾液腺に集合、蚊がヒトの血液を吸う際にヒト体内に侵入します。
その後、肝細胞で増殖し、個体数が数千になった段階で赤血球に侵入します。
鎌状赤血球貧血を持つとマラリアにかかりにくい
つまり、鎌状赤血球貧血をもつことは赤血球自体の寿命が短いため、マラリア原虫の生育ができなくなると言えます。
ダーウィンの進化論にあるように自然淘汰の上に発生・進化があるならば、劣性遺伝になると外界での生活に不適合が生じ淘汰されることが多い。
しかし、ある病気の原因遺伝子を持つことが、別の病気を防ぐことに繋がる。
黒人が多く住むアフリカなどの熱帯地域では、マラリアによる死亡のリスクは高く、鎌状赤血球貧血の原因遺伝子を持つことが、生存に有利である可能性がある、という驚きの記述でした。
@nightが『適切な目標設定を導く理論』のテーマで姫路、加古川、神戸、明石の4都市で開催決定!!
奮ってご参加ください(^^♪
*姫路会場は終了しておりますのでご注意ください。